やわらかな造形と絵肌の彩色/田中岑の絵画展

2014年 09月 19日

川崎市市民ミュージアムで開催中の展覧会「いろいろ、そうそう田中岑展。レセプションでは土谷憲司館長はじめご遺族の方々、親交の深かった酒井忠康先生、作家の渡辺豊重先生方々の興味深いお話を拝聴した。
その前後、すべての作品をじっくり拝見しました。色の評価の高い田中先生、よく観ると淡い無数の色と多彩な繪肌が画面を埋め尽くす。初期の頃は、若々しく力強いキュービックな作品が並ぶ。晩年に至る色彩の世界とは違うチャンネルだ。病に倒れ病室で描いたシリーズをはじめ晩年に至る色彩の世界は絵具の塗り重ねで出来る絵肌の世界だ。不透明だったり透明だったり、また付けたり削ったり。豊かな集積は淡い色を造り出す。良く「この油絵は深い色調ですね」なんて言うが、油絵具の深さは逆に浅い透明性の積み重ねの恩恵なのかもしれない。ニスを嫌ったという田中先生、制作の途中で構築される絵具の表情、取捨選択で表現される色と物質で充分なのだ。ニスで均質にする必要はないのではないか。普通、晩年の画家の回顧展では、昔描いた古い作品を洗浄し、ニスを塗布して色調を整えて当然、という先生方がほとんどなのだろう。でも田中先生の展示ではいわゆるニスによる輝きは無い。
レセプションではじめて知った、作品の長年の体系には、絵肌や光沢感の審美眼は変らない。晩年にやってきた回顧展でも、色調を整え、輝きえ与えるよりも、塗っては剝がし、丁寧に起し重ねて透かし、造り上げた色彩の画面そのものをたいせつにした。修復家も作家の哲学に従い、その審美眼に従って画面には均質なワニスは塗布をしなかったといえる。そんな技法のお話をミュージアムニュースには書かせて頂きました。
a0250454_11302855.jpg
a0250454_1130939.jpg

[PR]
by ogatajun | 2014-09-19 11:35 | Comments(0)